勉強トピックス
小学算数
中学へ向けた算数のまとめ(2021/08/30)
小学6年生も半分が過ぎると、少しずつ「中学生になる」という言葉が現実味を帯びてきますね。2学期から3学期のはじまりくらいになると、例年中学へ向けての受講希望が増えてきます。
その中で一番多くご受講いただくいのは数学です。
私自身が数学を専門として使っていたこともあり、数学を教えることに多少の自負はありますが、この点を評価して頂いているものと嬉しくもなり、着も引き締まります。
小学生から大学受験(ときに物理系の大学院受験生)を教えていると、小学校から一本の道筋がきちんとつながっている学び進めることの大切さを実感します。
小学校の算数が、中学の数学、高校の数学、そして大学受験へとつながっていくように算数をまとめて中学への準備することが小6後半で大切ですね。
算数と数学の違いは色々あると思いますが、最も大切なのは「数学では文字を使える」ということ。これにより、考えることがとても楽になり、多くの人が使えるものになります。
例えば小学生の次の問題を見てみてください。
(1)はじめ、リンゴを5コもっていました。つぎにリンゴを3コもらいました。合わせていくつのリンゴをもっていますか?
(2)いま、リンゴを8コもっています。そういえば、さっき3コのもらって8コになったのでした。3コもらうまえは、何コもっていたのでしょうか?
両方ともそれほど難しくない算数の文章題ですが、考え方は結構違います。
(1)は問題文をそのまま式にするように「5+3」という式が作れます。
(2)は「3コもらって8コになったのだから、もらう前は8コより3コ少なかったということだ」と考えたうえで「8-3」という式になる感じでしょう。
(2)の方は少し推理のようなものが必要なのですね。これは実際の現象と逆に考えているともいえます。実際の現象というのは「まず何コかもっていて、それから3コもらって8コになった。」ということです。「8-3」という引き算はこれと逆に考えて作られた式ですね。
中学になると何コか分からないものを文字を使って表すことができます。(2)も「xもっていて、3コもらって8コになった。」として「x+3=8」と表すことができるようになります。(2)も(1)も同じ考え方で扱えるようになるわけです。
こうして、文字を使うことが習慣的になると「考える」ことがシンプルになってきます。シンプルになるために、思考の負荷が減り、減った分をより全体像の把握に割り当てれば、より複雑な問題も扱えるようになります。この数学をもっと発展させていけば、例えばAIなども数学のこのような力によって作れるようになったといえるでしょう。
シンプルになるために、算数よりも簡単にできることが増えますし、そのために普通の能力の人でも扱えるようになります。必要なのは「キレる頭」より、みたままを丁寧に記述して観察すること、その確認、それと結構常識的な判断力です。数学者の秋山仁先生などは常識的な判断力として「玄関でくつをそろえられること」「自宅から学校や駅までの簡単な地図を書けること」「レシピを見ながらカレーを作れること」これらの力があれば、数学はできるとおっしゃっていました。私も同感です。
けれどもこの点が注意が必要になる点でもあります。小学生の高学年では(2)のタイプの考え方が、応用問題の練習の中心だったと思います。ですから、多くの小学生はこのタイプの考え方をするように教えられ、そうするものだと思っています。
けれども、中学生で同じように考えていると文字を使う技術のトレーニングが不十分になってしまいます。これにより、より複雑な問題への対応が難しくなります。中学受験をした子たちは、受験をしなかった子に比べ算数を十分にトレーニングした子たちととも言えますが、この子たちの中に数学が伸び悩む子が一定数いるのは、これが1つの原因と考えています。
「中学へつなげる」ことを目的として「算数を仕上げる」とすれば、この点に注意してまとめていく必要があると考えています。普通に算数をこれまで通りに復習してしまうと中学数学へのつながりが悪くなってしまうこともあり得るのです。このような算数と数学の違いと、そのために現れる注意点がいくつかあるのです。これから増えてくる中学へ向けた算数のまとめ学習、このような点に注意して教えていきます。
(スクラムnext 田中克典)