2024年4月28日に実施されました、中学3年第1回北辰テスト。
数学には、問題の難易度(特に複雑さ)と正答率のマッチしない問題がいくつかありました。( 2024年4月北辰テスト 数学 難易度と正答率が合っていない問題 )
比較的シンプルな問題でありながら正答率が低い問題が2題ありましたが、どちらも関数の問題です。この2題のうち第1問(7)について復習しました。
変化の割合
第1問(7)は変化の割合についての問題です。
関数の変化の割合は
$$\frac{yの増加量}{xの増加量}$$
で与えられます。
1次関数ではこの変化の割合は傾きと同じ値です。
1次関数の式では
$${y=ax+b}$$
における a の値です。
このように覚えている人は多いと思います。この知識を使えるようにもう少しアップデートしておきましょう。
関数の見方
中学生や高校生が使う関数の使い方にはおおよそ、次の3つがあります。
1.ある x に対する y の値
2.x の値が変化したとき y の値がどう変化するか
3.グラフを使って、図形を座標と方程式で扱う
1は例えば、バネにつるした重りと、バネの長さ(または 伸び)の関係
2は例えば、一定の速さで走っている車の進んだ距離との関係
3はグラフ上の点A、点B、点Cで作られる三角形ABCの面積を求めるような問題です。
バネは2のような見方もしますから、1と2は扱う問題(または現象)の違いというよりは、扱う人がどう見たいかの違いとも言えます。
どう見たいかというのであれば、バネや速さの関係式をグラフにして図形として扱っても構いません。数学では、このように、色々な見方を自分で選んで扱います。けれども、どの見方でも同じ式を使います。そして、どのような扱い方をしているかの例として、基本や例題を学んでいるのだと考えて学ぶと、基本即応用として学ぶことができるでしょう。ここでの応用というのは、問題集や入試の応用問題に限らず、大学や将来に使えるもの(いろいろな事柄に応じて用いることができるもの)として学ができます。もちろん、大学の推薦入試に使えるように、高校で理科の研究を行うときも役立つでしょう。
変化の割合と傾き
変化の割合というのは
$$\frac{yの増加量}{xの増加量}$$
ですから、2の見方で関数を扱っています。
横軸の x を変化させる量として「xがどのくらい変化したら、yがどのくらい変化するのか」という量を分数で書いています。
例えば変化の割合が
$$\frac{3}{2}$$
のとき次のように考えるでしょう。
・x の値が 2 変化すると、 y の値が 3 変化する
このように、分数で割合を表すのは小学生でも学んだことです。
A君がりんごを2つ食べるあいだに、B君は3つ食べました。B君の食べる速さはA君の何倍ですか?
このとき「A君2つに対して、B君は3つ」というのを
2:3 (ほんとうは3:2)
と比で表しますし
$$\frac{3}{2}$$
と分数でも表します。何倍かというときは、比ではなく分数で表すことが多かったですから、3/2倍というが正解です。
このように割合を分数で表すことを小学生で学びました。これを関数で使っています。
ただし、中3になるまでに割合を自由自在に扱えるようになっていない人も多いですから、これから扱えるようにしていくのが1つのテーマとなる人も多いでしょう。
単位当たりの量として分数を見ると
・x の値が 1 変化すると、 y の値が 3/2 変化する
として考えても良いでしょう。
一方で傾きというのは1次関数のグラフを図形的に見たとき、直線の横と縦の比で傾き具合を表したものです。
小学中学と普通に勉強してきた人は、直線の傾きをどう表すか?と考えたときに角度で表すと考える人が多いし、それが自然だと思います。けれども、xy座標平面というのは角度と相性が悪いのです。そのため、わかりづらいかもしれないけれど、横と縦の比で傾きを表しています。変化の割合と傾きというのは1次関数では似ています。けれども、それ以外の反比例や2次関数では、関数がそもそも傾いていないので、傾きという考え方があまり出て来ないのが自然でしょう。
関数のテーマ
関数のテーマの1つとして次のようなものがあると考えています。
同じことを「言葉」「式」「グラフ」(「表」)で表し、それぞれを対応させて扱えるようになること。
変化の割合が式では
$$\frac{yの増加量}{xの増加量}$$
と表されますが、これがグラフでは
$$\frac{縦のながさ}{横のながさ}$$
と、図形的な扱いと同じようになって見えることでしょう。
さんざん関数には3つの見方があるとか言っておきながら、同じに見えるというのは何だか矛盾していることを言っているように思えます。けれども、違う見方や違う問題が同じように見えてしまうというのが、数学が強力である原因の1つです。アナロジーとか類推、類比が数学を使うと自然とできてしまう感じです。ある見かたが同じ扱いを通して、違う見方として解釈され、そこから新しい特徴を見出したり、の見方に戻って見えなかったものが見えるようになったりします。数学は、これができる強力なツールとも思えます。
多くの場合で、問題等で与えられた状況がどうなっているかを把握するのに、ことばや式よりもグラフで視覚的に見た方が、見やすいものです。
ですから関数ではほとんどの場合で「どうとこうか?」と考える前に、まず与えられた事柄をグラフに整理します。「どうなっているか?」を知らずに「どうするか?」を考えるのは無謀と思いますが、多くの中学生や高校生はこれをやってしまいます。「どう解くか?」を中心に教わってしまっているからでしょうか。
「どうなっているか?」を把握するために、グラフにしたら、変化の割合は直角三角形の横と縦の比を分数で表したものとして求められます。
第1問(7)
結局、第1問(7)は次のような流れです。
1.問題文を読みながら軽く反比例のグラフを描く
2.x=4 と x=8 の点を書き入れる
3.この2点でつくられる直角三角形を描く
4.この直角三角形の横と縦を読んで分数にしておしまい
問題を解くというのであれば、この4つのプロセスだけですが、応用を考えて復習すると、関数の見方などとして広がっていきます。
関数は、式が少なく、同じ扱い方を複数の見方で使うという特徴がありますから、1つのことがどんどん広がっていきます。ひろがっていきますが、すぐにほぼ全部にいきつきます。そして全部が結びつき、どれも同じような扱い方になります。
だからこのプロセスは全体の正答率が6%、偏差値70以上でも69%の第3問(2)でもほぼ同じです。
どれもほぼ同じですから、色々勉強しなくても色々できるようになります。扱う技術が少ない分、どんどん上達します。
今日ここで書いたことは、偏差値50くらいの中学3年生に話しても、結構の人が分かってくれます。なるほどなぁと興味を持って聞いてくれる人も多いです。そして、第3問(2)のような正答率が低い問題でも、簡単だと感じるようになります。頭が悪いとか、数学ができないということではないのですね。このように日常的に勉強できると、応用も楽になっていいですね。