算数や数学では、当たり前なのですが、教わる単元に順番があります。このため、最初に勉強したときは、使いやすくない形で教わってしまうことがあります。このような場合は、より使いやすい形で扱える単元を教わったときに、アップデートしておくとよいのですが、それができていない生徒も多いように感じます。
〇〇で△△(〇〇あたり△△)
例題
「たけしさんは150gで180円のお肉を買いました。このお肉は100gでいくらのお肉でしょうか。」
小学5年で分数の約分を学ぶまでは、この問題は割り算とかけ算で解く必要があります。
$${180}\div{150}=1.2$$
$${1.2}\times{100}=120$$
このような計算で、100gで120円と答えにたどり着きます。
小学4年で分数の意味を教わりますから「150gで180円」は次のように表すことは、約分を学ぶ前でもできます。
$$\frac{180}{150}$$
単位を付けてしまって
$$\frac{180円}{150g}$$
と書いてもよいでしょう。
さらに小学5年で約分を教わると、ここから色々なことが読み取れるようになります。
10で約分して
$$\frac{180}{150}=\frac{18}{15}$$
とすると「15gで18円」ということが分かります。
さらに3で約分すれば
$$\frac{180}{150}=\frac{18}{15}=\frac{6}{5}$$
となり「5gで6円」ということが分かります。
もし、最初に3で約分していたら
$$\frac{180}{150}=\frac{60}{50}$$
となり「50gで60円」ということが分かります。
「100gで〇円」というのが分数では
$$\frac{〇}{100}$$
と表せることが理解されていれば、分母を100にすればよいことが分かりますから、次のように約分と倍分で答えにたどり着きます。
$$\frac{180}{150}=\frac{60}{50}=\frac{120}{100}$$
ここから、100で120円ということが分かります。
分数を使う利点は多くあります。
1つめは約分ができるために、一度に大きな数で割る必要のないことです。
$${180}\div{150}$$
の場合、150で割ることになりますから、150の倍数を使って計算を進める必要があります。
約分の場合は、10で約分することもできますし、3で約分することも、5で約分することもできます。2段階や3段階にして、3で約分してから5で約分するなどもできます。要は大きな数で扱う必要がないために、計算ミスのリスクが減ることです。
2つめは、約分の途中段階で意味をとることができることです。
途中の段階で意味がとれるため、約分ややりきる必要がありません。ただし、この使い方は「分数の意味を読み取る」という頭の使い方を身に着ける必要があります。
小学生が分数で苦戦してしまう理由の1つが、分数の意味をしっかり理解していないことです。小学生は、小学1年生の初めの頃に、たし算、ひき算を学んだときから「式の意味」を教わるのですが、どうしても意味よりも計算できることを重視してしまい、意味をしっかりと意識することがおろそかになってしまう子が多くいます。
とはいえ、教えてみると多くの子は戸惑うことなく理解できてしまいますので、「意味を読み取る」という習慣があるかないかの違いの問題とも言えます。
このように分数を扱うことで、先ほどの問題では3で約分して分母が50になった段階で、2で倍分して分母を100にしています。つまり、約分は計算を簡単に済ませられる可能性を持っているということです。
3つめは、意味をとらえながら進められるということです。
分数で苦戦する理由で「意味をしっかり理解しないこと」が多くありますが、同時に「意味は理解できる」小学生は多くいます。意味を理解しないのは、理解できないのではなく、計算にばかり意識を向けてしまい意味を重視しないという意識の問題です。
そして、苦手になったり嫌いになる大きな原因が「理解できないから」ということも注目すべきでしょう。これも「理解できない」のではなく「意味を意識しない」ために「理解の方法が分からない」ということだと思います。
根本原因は「意味への意識の欠如」と言えます。
約分の方法を教えてみると、意味をとらえながら解き進められるため、分かるやすく、意味が分かるから楽だし(実際に計算も楽だし)、簡単だと感じるという小学生が多くいます。「なんだ、こんなことだったのか」という言葉はよく聞きます。
4つめは、小数を扱う必要がないことです。
小数では、小数点の移動という分数以上に複雑な操作がつきまといます。また、分数より意味が理解しずらいという欠点もあります。
5つめは、日常的によく触れることです。
ゲームをしている子は、分数の表記に慣れています。
HP 30/100 とかです。
「体力が100あるうちの30」という意味でゲームで使われていますして、オンラインゲームを行うような最近の子は「100G/5個」等の「5個で100G(ゴールド:ゲーム内の通貨単位)」等の表記にもゲームで触れていたりします。
スーパーやドラッグストアで「98円/100g」という表記を見ている子もいるでしょう。
分数表記は、日常的に使われる機会が多い分、接する機会が多いですから、理解しやすいのです。また、日常的に使われる機会が多いということは、それだけ使いやすい、分かりやすいということでしょう。
子供も、算数が日常的に使われていることから、今勉強している算数が将来も使われることも想像しやすく、勉強の意欲も湧きやすくなるという可能性もあります。
このように、分数表記は利点が多いのですが、小学生はあまり使いません。中学生も高校生も使いません。残念です。そしてもったいない。
原因は、最初に教わったときには「知識の制約」から、割り算を使うしかなかたのに、それが分数の約分を教わった後でもアップデートされていないことです。(それなら、割り算とかけ算のときにこのような問題を扱わない方が良かったのではないのかとも思えてしまいます。)
このような単元は、小学生に限らず、中学生、高校生・・・と多く存在します。
知識のアップデート、大変に大切です。